姉は朝、顔を洗わない…そうな。
「だってさ、顔洗うとさ、肘の方に冷たい水がつーっとつたっていくじゃない？あれが嫌であたしゃ顔洗うのやめたのよ」
はぁ～？
姪っ子の飼っていた可愛～いウサギの“ぶんちゃか”が、前足で顔周りをくりくりと、上手に愛らしく手入れしている光景が私の頭に浮かんだ。
と同時に、姉が前足ならぬ両手の甲や指先でぐりぐり顔をぬぐったり目の周りをしごいている光景も！
おー、ブルブル、怖すぎる。姉、現在６１歳。還暦過ぎた大人。音楽を生業としている。
時たま、テレビでお茶の間の皆様に顔をさらしている。
あ～それなのに。
朝、顔を洗わない歴数十年。
「やめたのはいつから？」と聞く勇気もない。
洗顔レス女。
百歩譲ってグルーミング女。

これから始まる連載は、「夜は顔を洗ってくれているだろう」と、まだ姉を信じている妹が綴る、語るも大笑い、聞くも大笑いの秦万里子物語である。

 

次週に続く