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大爆笑祖母の見送り(後編)

2020.06.04

さて、病院スタッフさんの椅子並べが師範クラスに上達した後、あさばあちゃんは満108歳で大往生。この年齢だから誰も文句は言わなかった。本人も満足だったに違いない。いや、何か一つ気の利いたジョークでも言ってから逝きたかっただろうなあ。

そして、普通だったら、お葬式はしめやかに、と行くところだが、母の系統はどうもそうはいかないのだ。

うちは、親戚もかなりのキャラぞろいで、祖母と同居していた長男(母の弟)もしょっちゅう冗談を言っては周りを笑わせるタイプ。幼い頃遊びに行くと、四つん這いになり背中に乗せて遊んでくれたから、姉と私は「パカパカおじちゃん」と呼んでいた。お馬さんのぱっかぱっかだ。途中「ひひぃ~ん!」といななく時など大はしゃぎだ。「明夫」という昭和な名前が本名。さて、そのパカパカおじちゃんの奥さん、時たま出てくる伯母(祖母にとってはお嫁さん)美代子おばちゃんなんぞ、血はつながっていないのに、姉と良く似ているまさかのキャラクター。

「あら、あたし、本名は“美代”よ。みんなが“美代子おばちゃん”っていうからそのまんまにしてたけど」と言われた時には驚愕した。わりと最近の話だ。芸名だったのか…

だもんだからお正月に阿佐ヶ谷の家に親戚一同集まると大騒ぎの大笑い、というのがいつものパターン。

でもさすがにお葬式は別でしょう…普通は。

さて、大往生したあさばあちゃんを見送るため、葬儀屋さんが阿佐ヶ谷の家にやってきた。さすがに祖母のお友達は誰も生きてない。同級生10人集まった、なんて言ったらテレビが取材に来る。

ということで、親戚やごく親しい人だけ集まった。葬儀屋さんが段取りの説明をして、司会進行、すべて執り行い、スムーズに進んだ。いよいよクライマックス、棺のふたを閉める前に生花を入れる時が来た。騒ぎの大きい一族もさすがにしぃーんと静まり返った。ああ、ついにあさばあちゃんともお別れか、と。

皆で代わるがわる祖母の周りに菊花を入れ、しんみりした感じになった。そして葬儀屋さんが「それでは皆様、最後にコチョウランをお棺にお入れください」と静かな声で告知した。

すると、静まり返った部屋にパカパカおじちゃんの声が響いた。

「あ~!びっくりしたぁ~!ご長男を棺にお入れくださいって言うからさ、俺、入んなきゃいけないのかと思ったよ~!ばあさんの隣に入るのかなってさあ」と。

コチョウラン→御長男  さすが、普段から落語好きの伯父!

その絶妙なタイミングの発言に、一同、葬式なのに大大大爆笑!

あり得なかったのは、決して笑ってはいけない葬儀屋さんまでこらえきれずに笑ってしまっていたこと!

しかも、そっとしておいてあげればよいのに「葬儀屋さんが笑ってる!」と何人かが指摘してまたまた爆笑。なんと楽しいお見送り!きっとあさばあちゃんもお棺の中で笑っていただろうな。

そして、負けずに言い返していたろう。

「明夫が隣に寝るなんてまっぴらごめん!あたしゃ一人でゆ~っくりあの世に逝きますよ」ってね。間違いない。