rRAMPAPPA(ランパッパ) / アーチスト秦万里子の自発信サイトrRAMPAPPA(ランパッパ) / アーチスト秦万里子の自発信サイト

激震が走った日(前編)

2017.09.30

前編

私が、姉という存在に疑問を抱き始めたのがいつなのか…

普通なら、いつの事だかわからないけど徐々に、となるところだが、私は今でもその日の事ははっきりと覚えている。

それは中学の時、0さんという友達の家に同級生何人かで招かれた時だった。

当時の我が家は昔ながらの古い日本家屋の家だったから、庭も地味目の和木が生えて、真っ黒な土の上に飛び石が、みたいな。

それとは対照的に武蔵野の0さんの家は瀟洒な新築のお宅だった。

家の前に広がる緑鮮やかな芝生の庭!和室の前には立派な庭石。

詳細には覚えてないが白い壁紙に素敵な把手のついた玄関ドア、みたいな。

しかもその友達ときたら、バイオリンなんか習っていてお上品。お勉強も出来る。自分の家なのに招かれた私達よりはるかによそ行きの格好。白いブラウスにネックレスまでしてるじゃない。

家も住んでいる人もオシャレでハイソな空気が漂っていた。

よく考えてみるとどうして友達になれたのかよくわからない。

背が高くて立派なお父様は、ベルギーに出張にいらした時にお土産に買ってきたというチョコレートを私達に勧めてくださった。

今から40年以上前にベルギーのチョコ!もうそれだけで素敵!

普段はチョコレート駄菓子、ちょっと頑張ってもハワイのお土産のナッツの入ったチョコが精いっぱいだったのだから、ベルギーのチョコなんて!見たこともないし勿論口にするのもお初。

そこに招かれた友達はみんな生まれて初めて頂いた…はずだ。めちゃくちゃオシャレな大人の味がして、気分は舞い上がり絶好調。

すっかり違う世界に入り込んだ私はその後さらに衝撃を受ける。

外国映画に出てくるような素敵なお姉さまが登場したのだ。いや、勿論日本人なんだが、雰囲気が洋物。美人ですらりと背が高い。

落ち着いた所作、おっとりしたお話のされよう。ストレートに伸びたロングヘアーで、前髪はおでこに斜めにかかっていて素敵!笑いは勿論【smile】で決して【laugh】ではない。うちの姉?泣く子も黙る天然パーマ、笑う時はそこまで大げさに笑わなくても~、というくらい大口あけて「わはっは!」である。

そもそも、中学生の時は高校生だってすごく大人に見えたのだから、7~8歳年の離れた、おそらく当時大学生だったその姉さまは、もうもう雲の上。 その頃のうちの姉はどんなだったかと言えば~高校の下校中、学校のカバンを無理矢理肩にかけ、制服のネクタイを首に巻き、「スチュワーデスみたいに駅まで歩いたら幾らくれる~?」なんて友達同士でおふざけしていたまるでガキンチョ。すでにかなりの水をあけられている。

さて、そしてその激震の瞬間はやってきた。お姉さまがコーヒーを入れて、おっしゃった。

3,2,1!はい!

「としちゃん、皆さん、コーヒーが入ったわよ。どうぞ」ドカ~ン!!!

え?今の、な、な、な、何? 時が止まった…

ま、ま、まさか、お姉さんが妹にコーヒーを入れてくれるなんて!しかも、妹を「ちゃん」付けで呼んでいる!

こ、こ、これが“お姉さん”ていうもの?

 

次週、後篇に続く