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激震が走った日(後編)

2017.10.07

後編

さて、友達のお姉様がコーヒーを入れて、妹や私達に優しく語りかけたのを目の当たりにして、私は天と地がひっくり返ったみたいに口をあんぐりとあけて、しばらくその場に佇んだ。

そして頭の中をうちの姉の声が通り過ぎて行った。

「のりー、のり~、のりこー!お茶入れてー」「のりー、なんか食べるもんな~い?」「のりー、お茶!お茶!お茶ターイム!」

ガ~ン!

妹に対してこんなにやさしく語り掛け、コーヒーなんて入れてくれるのが本来のお姉さん?

妹を従えるのがお姉さん、指示されて動くのが妹、だと思っていた私。そういう家庭で育ったのだからそれしか知らなかったのだ。だから、衝撃。びっくり。あんぐり。

し、しかも…コーヒーときたらドリップ!

大体我が家では、そもそも子供にオシャレなコーヒーは浸透してなかった。私が日本茶を入れ、姉に「お茶入ったわよ」というのが普通、朝は紅茶。たまーにインスタントコーヒー。

祖父は明治生まれのわりにはコーヒー好きだったが、小さいカップに角砂糖を2つも入れていた。父なんか、目を放すと3つも入れていた。昔の日本人丸出しだ。あ、ちなみに後年、喫茶店の砂糖が角からスティック状のものに替わってから、父は「あと2本」と店員さんに要求していた。細いのだったら5本は要求している。とにかく、私たちが小さいころのコーヒーってそんな感じだったのだ。

0家がブラックで飲んでいたかどうかまでは覚えていないが、とにもかくにもこの日は忘れられない激震の日となった。

本物の「お姉さん」、本物の「姉妹」を知った日!

ついでに本物の「チョコ」と「コーヒー」を知った日。

「オシャレでハイソ」な1日。

姉の名誉に関わるので言っておくが、姉も勿論優しかった。でもそのお宅の姉妹関係とは、少々、いや明らかに違っていたのだ。

 

さて、家に帰るや否や、ちょい恨み節で私は姉に直訴した。

「ねえねえ、0さんのお姉さん、すごーく綺麗ですごーく優しかったよー、コーヒー入れてくれたのよー」

予想していたとはいえ姉の返事はこれでおしまい。

「あらそ!、そりゃ良かったわねー!」

 

このエピソードはいまだに語り草。そして、それ以来、姉が私に、ごくごくたま~にコーヒーを入れてくれる時、必ず気持ち悪いまでの猫なで声でこう言う。

「典ちゃん、コーヒー入ったわよ~、飲むぅ~?」普段から言いなれてないものだから下手な舞台俳優みたいだ。はいはい、頂戴いたしますよ(-_-;)。

このパフォーマンスもすでに40年以上続いている。

しかも調子に乗って他のシチュエーションでも「典ちゃん、これ、どかしてくださる~?」なんて変なアレンジバージョンで言ったりする。無視に限る。

さて、0さんとは今でもずっと友達付き合いをさせていただいている。お姉さまとはしばらくお目にかかってないが、きっと素敵に年を重ねられているのだろうなぁ…

そして、なぜ0さんと友達になれたのかもいまだ謎である。

追記

姉が、我々姉妹と0さん姉妹で伊豆の海にご一緒した時の事の思い出を話してくれた。

まず、レジャーシートが違ったそうな(あ、我が家はおまけっぽいぺろぺろした代物)。そして、そのシートに横たわるポーズも違っていたそうな。しかも、0さんのお姉さまは、「何か、飲み物ご要り用じゃありません?」とのたまって姉の分まで買ってきてくだされたそうでいらっしゃる。当時の姉では到底思いつかない発言であらせられる。敬語が明らかにおかしくなってきた。ま、その位お上品で素敵な方だったのだ。

しかも、姉曰く、「すらりとした彼女はさ、日焼け止めを塗る面積が縦長、私は横長だったなあ」

ガッテン!