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盛り癖?(前編)

2017.11.11

私が主婦をしていたころ(今を去ること30年位前!)、豪勢なことに我が家に活車海老が送られてきた。
おがくずの中に埋もれていて、死んでるのかな、と思うとピピン!と跳ねて皆が悲鳴を上げるパターンの箱詰めだ。

しかしながら当時、旦那は出張中。
あ、正確に言えば、「当時、当時の旦那は出張中」。

一人じゃ食べきれないし、まずは実家にお裾分け、帰り道何かと世話になっている従兄の家にもお裾分け、と車エビを車に積んで出かけた。

さて、無事実家に届け、そこから従兄の家を目指し国道を走っていた時の事。前を走っている車がファミレスに入るために急ブレーキを踏み、私も急ブレーキ、なんと直後に後続車からズドーン!と追突されてしまったのだ。

しかもその追突した車ときたら道路横に寄せるふりをして、なんと逃走!
「ぐあぁああ~!卑怯ものぉおおおお!」と頭に血が上った私は、映画で当時流行っていたカーチェイスのごとくクラクションを鳴らしっぱなしで追いかけ、5キロ以上追跡、その車を追い越し、自分の車で相手の車をブロックして急停車、加害者を抑え込んだ。今でも覚えているが、最後の方はいくらクラクションを鳴らそうとしても、「ぷへ~」とか「ほへ~」とかしか云わなくなるくらい鳴らし続けたのだ。そして警察が来るまで、加害者が逃走しないよう、鬼の形相で相手に「免許証出しなさいっ!」と詰め寄った。

これウソ偽りなく本当。
私は若い時から怒らせると怖いのだ。いひひ。
しかし、余程恐かったんだなぁ。相手の男は素直に免許証さしだしていたもの。ま、こんな私だから旦那は要らないのだ、ということにしよう。

で、肝心の話をすると、当時携帯電話など持っていなかった私は、いとこの電話番号を覚えていなかったこともあり、運良くそこにあった電話ボックスからまず警察に連絡、そして姉に電話をして、「追突されちゃったんだけど、夢中で追いかけたからここがどこかもわからない、ふーちゃん(従兄の呼び名)に電話をして、とにかく遅くなっても届けるからって伝えてね」みたいな伝言を姉に頼んだのだ。それが運の尽きだった。

話はこうなった。

従兄の家まで行ったのに、灯りが点いていなかったからがっかりして引き返した、その途中大事故に遭い、どこに居るかもわからない、重症かもしれない。はぁ~?

話が全く合ってない。
大体死ぬかもしれないのは、私じゃなくてクルマエビだ。
家に行って灯りがついてなかったって、いったいどこからそんな話を引っ張ってきたんだ?
そんなことひっとことも言ってないのに!

完全なる創作だ。

私→姉→従兄 たったこれだけなのに、伝言ゲームで10人以上経由して伝えられたみたいになってる。おかしい。

待っている従兄夫婦はそりゃあ心配するのが当たり前。
事故を起こして救急車で病院に運ばれた事例がないか神奈川県警にまで電話をしたとのこと。で、かなり遅くに「お待たせ~」と登場した私に、従兄の奥さんが「生きてた~、のりちゃん」と大感動(あ、姉と違って私の事をちゃん付けで呼ぶ好い人だ)、という顛末だった。

モバイルで連絡がとれる今の時代ではあり得ないエピソードでもあるなぁ。
ちょい聞きで、断片的な言葉だけ頭に残る。
そこへ自分の妄想?で話膨らませて相手に伝える。
姉の中でそれは勿論「ウソ」ではない。話を盛ったつもりもない。
彼女の中ではもうそれが事実なのだ。
恐ろしいことこの上ない。

しかも、姉に抗議しても「あら、どうしたのかしら?そうだった~?へぇ~?そ~お?あら、あたしそんなこと言ったぁ~?」と他人ごとである。
本人、至って悪気はないから余計始末に悪い。

そして、なんとなんとつい先日、私は‟盛り癖”の片鱗を母に見てしまい、そのDNAの恐ろしさに啞然としたのだった。

次週、後篇に続く