ナイスパフォーマンス~スチュワーデス編(前編)
2017.08.19
小さい頃の姉との遊びは主役と脇役で成り立っていた。言うまでもないが姉が主役、私が脇役である。
例えばスチュワーデスごっこ。花形スチュワーデスは当然姉の役、私は乗客その1。まあ、パイロット役よりは退屈しない。
台所やら子供部屋やら、あちこちから集めてきた椅子を並べ、いや、正確には「はい、そこに縦に並べてね」と命令され私が並べるのだ。満員の乗客の設定であるが、実際は私だけ。あとは “姉だけに見えている乗客”である。
あ、勿論国際線ね。
でもそこは八畳の思いっきり和空間。
タンスの一番上の引出しから母のスカーフを出し、首に巻いてそれは始まる。
「アテンション、プリーズ!」に始まって救命胴衣の使い方までなかなか細かい。「ふっ!ふっ!」とチューブに息を吹きかける動作も外せないパートだ。それが終わると今度は新聞をいくつか手に持って「新聞でございます。お読みになりますか~?」と歩く。次はかごに盛られた飴を「いかがですか?」と勧める。これ以上得意満面の顔をしたら、鼻がそっくり返って鼻の穴が上からでも丸見えになりそうなくらいの得意満面顔だ。
新聞は、祖父が超真面目人間で三紙とっていたから簡単に用意できた。飴は…お茶の間のお菓子の入っている棚からかき集めてきた。いくつかは紙を丸めただけのダミーだったような気もする。姉に言わせれば、私は配られた飴を必死に舐めていたそうだ。失礼なっ!
ふん、その頃は国際線に乗ったことなんかなかったから{機内食}の存在を知らなかったくせにっ!でも、知っていたら更に外せないパフォーマンス「Chicken? or Beef?」とかが増え、姉の得意顔が増長し、私が椅子に座る時間も長くなったから助かったともいえる。
とにかく、スッチーごっこは最初から姉の独壇場であったことは間違いない。
そしてなぜか白い手袋をはめていた。私の記憶にはないが、昔のスッチーは白い手袋をはめていたらしい。
さあ、それからハチャメチャ機内アナウンスが本格的に始まる。
次週、後編に続く