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過ぎたるは猶及ばざるが如し~振りすぎ(後編)

2017.12.02

さて、ストレートヘアーにあこがれていた泣く子も黙る天然パーマの姉は、アルバイトで小銭を稼ぎ、満を持してストレートパーマなるものをかけてみた。

当時は板みたいなものに髪の毛を張り付けて薬剤をかけていたような…とにかく今のストレートパーマより大掛かりなことだったし、時間もかかり、料金も決して安くはなかったから掛けるには結構勇気が要ったのだ。

さて、大枚をはたいて憧れのストレートヘアーになり、初めて体験する直線さらさらヘアーに姉はすっかり舞い上がった。
なんたって、ちょっと下を向くと、前髪がはらりっとおでこに落ちてくる。
生まれて初めてのこの感覚に彼女はどっぷり酔いしれた。

元々その気になりやすい性質だ。おでこに前髪が落ちてきた際、手で掻き上げるのも女らしくて捨てがたいが、顔を上方向にくっと振って前髪をあげる動作を姉はたいそう気に入った。

いけてる!と。

ほんのちょっとの「はらり」でも顔を上方向に振って前髪をあげる。全く必要性が感じられない時に下を向き前髪をはらりと垂らしては顔を上に振る。

「ねえねえ」と呼びかけると髪の毛の裾が弧を描いて回るよう、必要以上の勢いで大げさに振り向く。シャンプーのテレビCMのごとくである。

振り向きながら「何かしら?」と妹に訊く口もずいぶん洒落てきた。
顔は同じだ。

嬉しくて嬉しくて丸1日、顔を縦に横に振りまくった。傍から見たらほぼロックミュージシャン。その結果何が起きたか…

彼女は翌日ひどい頭痛に見舞われて丸一日寝込んだ。

授業を休んだ。
アルバイトも休む羽目になった。
振りすぎもいいところだ。

ストレートパーマは後にも先にもその1回で終わった。
ご愁傷様である。

次回に続く